さわさわと、薔薇の葉の重なり合う音が、 静かに耳に響いている。
セイジュは何も言わない。
だから私も黙って、回された腕に手を添えた。
時々セイジュは私の頬にキスをしてくる。
だから私も、セイジュがキスをしやすいように 少しだけ顔を横に向ける。
【セイジュ】 「……ここは素敵な場所だね。 とても落ち着くよ」
独り言のように呟いて、また私の頬にキス。
ねえ私、やっぱりバカだから勘違いしちゃうよ。
だって、これじゃあまるで、 セイジュに愛されてるみたいだもん。
これでもセイジュは私のことなんとも思ってなくて、 ただの大勢の女の子のうちの一人なんだったら……。
私、これから先、 どうやって恋をしたらいいのかわからない。
相手からの愛情を、 どうやって信じればいいのかわからないよ。
セイジュと一緒にいると、 わからないことばかりが増えていく。