イチゴのタルトにフォークを刺す直前、
私はちらっとレニを見た。

レニ、本当はイチゴのタルトが
食べたかったんじゃないのかな。

一個しかないから、諦めちゃったのかも。

【アーシェ】
「ねえレニ!」

私はタルトのイチゴを刺し、
レニの口元へ差し出した。

【レニ】
「なっ……」

【アーシェ】
「はい、あーん」

【レニ】
「お、おまえはバカか」

【アーシェ】
「だってレニ、ほんとはイチゴのタルトを
食べたかったんでしょ?」

【レニ】
「そうだが……いや、別に食べたくない」

【アーシェ】
「お城のコックさんのタルト、すごーくおいしいの。
レニも食べたら絶対に気に入ると思うな」

【レニ】
「そういう問題じゃ……」

【アーシェ】
「はい、あーん」

【レニ】
「……」

【アーシェ】
「あーん」

【レニ】
「あ、あーん……」