んっ……もう、こんなところあの二人に見つかっちゃったらどうしよう。

甘い香りが漂う部屋の中、私とカイルの熱い吐息だけが聞こえる。

カイルがいけないんだもん。
カイルがあんなこと言うから……。

――おやつの時間が近くなり、プリンが食べたいなっておねだりしたら、カイルはさっそく張り切って作ってくれた。

卵とミルクとお砂糖と、ほんの少し『ばにらえっせんす』を入れてつくった蒸し焼きプリン。
冷えるのが待ちきれなくて何度も冷蔵庫を覗いてたんだけど、やっとカイルから、十分冷えたから食べていいですよっていうお許しが出た。

「今お皿に移しますから待ってて下さいね」

カイルはプリンカップの内側に竹串をくるっと一周させると、慎重にお皿の上にひっくり返した。

ぷるるんっ

ふるふると震えながら落ちた途端、甘い香りの『からめる』がお皿の上に広がった。
私はいますぐにでもスプーンを握り締めてお皿に飛びつきたいくらいにワクワクしてるのに、カイルはその隣でお皿の上で震えるそれをじっと見つめたまま、ぽつりと呟いた。

「姫様のおっぱいみたいですねえ……」

きょとんとして私がカイルを見上げたら、カイルはすぐにまっかっかになっちゃって、慌てて首をぶんぶん振った。

「あわわわ! わ、私なにを言ってるんでしょうか!? 決してやましい意味じゃなくてですね、純粋に姫様の胸も柔らかくてぷるぷるしてるなってことを思い出して。
…………わー!! いえ、だから変な意味じゃなくて!!」

一人でしどろもどろになるカイルの手を取り、私は自分の胸の上に引き寄せた。

私の胸とプリン、ほんとに似てるのかカイルにその手で比べてみて欲しかったから。

「あ、姫様……」

それから自然と唇が吸い寄せられ、こうなったら最後、もう私たちは止まらなかった。

部屋に戻る時間すら待てなくて、私たちはそのままキッチンでお互いの服を脱がせ合った。

それから何度も何度も名前を呼び合い、キスをして、幸せを分かち合う。

レニやセイジュにこんなところ見られたら怒られちゃうってわかってたけど、見つかっちゃわないように声を殺すのもまた、刺激の一つになっていた。
カイルもそれをわかっているのか、私の背中で切なく息を吐き出していた。

「あ……姫様……はぁ……」

後ろから私を抱きかかえ、腰を動かしながらカイルは私の胸をゆっくり優しく揉み上げている。
指先で紅い部分を摘まれて、私も子猫のような甘い鳴き声を上げた。

「ん……姫様の声可愛い……すごく可愛くて……可愛い……くて……。その声……大好き……」

私だって、ほんとはいつもカイルの声を聞くだけでえっちな気持ちになっちゃうの。
すぐにカイルに触れたくて、カイルに抱いてもらいたくて仕方なくなっちゃうんだよ。

「あ……はぁ……。さっき……プリンに似てるなんて……言ってしまいましたけど……はぁ……」

耳を舐めながら小さな声で囁かれ、快感に体の奥がきゅっとなる。

「プリンなんかより……姫様の胸の方が……もっと……柔らかくて……いい匂いが……します」

私もね、せっかく作ってもらったプリン、もうどうでもよくなっちゃった。ごめんね、カイル。
だってカイルとこうやってる方がずっと楽しくて気持ちがいいんだもん。いっぱいいっぱい、カイルのこと感じていたいんだもん。

「んっ……姫様、好き……です。姫様の全部が……大好き……」

私だってカイルのことが好き、大好き。

カイルの優しさ、あたたかさ、笑い声、それにこうやって私を抱く腕も、全部、全部が大好き。

私はすっかりプリンのことなんて忘れて、全身でカイルを味わった。



END