目が覚めるとすぐ傍に、レニの顔がある。 それは決して幸せな目覚めではなく、私の中に一つ傷が増えた哀しい証拠。 それを癒す間もなく、また新しく刻み込まれる。 今度はもっと深く、強く。 決して消えない傷をつけてやると言った言葉のとおり、それは毎夜抱かれる度に増えていく。 この鎖から逃れたいと心では思っていても、体は確実に鎖が食い込む感触を求めている。 私はレニという名の糸に吊るされた人形だから。 いつかきっと、身も心もレニに支配され、レニなしでは息をすることすらできなくなっちゃうんだろう。 その時の私の感情はどうなっているのかな。 諦めか、それともそれすら自分の意思だと思えるような惨めな錯覚に陥っているのかな。 それは今はまだわからない。 ――そして今日もまた、私は新しい傷を刻まれようとしていた。 「何を見てる」 鋭く冷たい、氷のような瞳が私を射抜く。 何も答えないままじっとそれを見ていたら、少し乱暴に胸のボタンを外された。 繰り返し行われてきた行為だけど、自分の胸が露になる瞬間は未だ恥ずかしい。 少しだけ身をよじらせて両腕で胸を隠したら、レニの手はあっという間に私の両手首を掴んで、頭の上に押し付けてしまった。 「形だけの抵抗か? 本当は俺に抱かれたくて仕方ないくせに」 胸の膨らみを持ち上げられた途端に甘い吐息が漏れる。 そのまますでに少し固くなった突起を指で弄ばれたら、僅かに残っていた体の、そして心の抵抗もあっさりと消えてなくなってしまう。 「今日もいい声を聞かせろ」 紅色の突起を唇で軽く挟まれた時には、私は自らレニの首に手を回して小さな鳴き声をあげていた。 時には乱暴に、自分本位でしか私を抱かないレニ。 それでも彼が私に与える快楽は余りにも大きくて、すっかりそれに溺れてる私がいる。 レニのそれが奥を突く度に、欲望の塊以外の何者でもなくなってしまう。 レニの動きに合わせて淫らに声をあげ続ける私を、満足そうなレニの目が見下ろしている。 悔しい。 だけど体はもっと深い刺激を求めるから、私は自ら腰を動かしてしまう。 「いいか、おまえはもう俺の物だ。俺以外では満足できない体にしてやったからな。おまえは一生俺から離れられない、俺から逃れられない」 耳元で呪文のように唱える言葉。 ワタシハレニノモノダカラ。 繰り返し心に刻み込まれていく。 「わかったなら返事をしろ」 荒らぐ息を整えることができなくて、黙って私の中を行き来するレニのものを見ていたら、ぴたりと動きが止まった。 私から零れた雫で、レニのそれも濡れているのがわかる。 「これが欲しいならちゃんと返事をしろ。じゃなければ、ここでやめてもいいんだぞ」 私は慌ててかすれる声で返事をした。するとレニはにやりと笑い、さっきよりさらに奥深くそれを入れてきた。 果てしない快感が大きな波となって襲ってくる。私はめちゃくちゃになりながら、甘えた声でレニにおねだりし続けた。 いい。 もう、これでいい。 ワタシハレニノモノダカラ。 ――また一つ、傷が増えた。 END |