頬を誰かがつついている。

うーん。くすぐったいなぁ、もう。
せっかく気持ちよく寝ているのに。

わたしはその手を軽く払って、寝返りを
打った。

……ん? 今度は髪の毛を誰かが触っている。

つまんでは離して、サラサラと落ちていくのが
わかる。

髪をつまんでいる手をパッと払ったつもりだった
けど、その手は空を切っていた。

【ユーリ】
「しつこ……い」

眠いものは眠いのよ。ほうっておいて。

夕食の準備を始めるまでは、しばらく
寝かせておいてほしい……。

【ユーリ】
「…………ん?」

何だかいい匂い……。

鼻をかすめた香りに、うっすらと目を開ける。

視界がまだぼんやりしていた。
眠い目を擦り、周りを見回す。

何気なく伸ばした手が、黒くやわらかなものに
ぶつかる。

これは髪? その手を伸ばしていくと、
ジョリジョリしたところにふれた。

目がだんだんとはっきりしてくる。

【ファウスト】
「よう。お嬢ちゃん。かわいい寝顔だったよ」

ありえないくらい近くでファウストの笑顔を見た。

【ユーリ】
「きゃあ!!」

飛び起きたわたしは転がるようにベッドを下りた。

な、なんでファウストがわたしの隣にいるの?!

ファウストは一つあくびをすると、
片肘をついたまま、くすくす笑っていた。